サ高住は大量に写真を送ってきたが、大半は「家具を置いた箇所のへこみ」だった。
それ、キズですかいの?
そんなん、ぜんぶ「敷引きの対象」になるん?
▼こういう「へこみ」ね。
こういうヤツをぜんぶ写真に撮っている。
ああ、いわゆる「原状回復条件」だろうけど、
↓
通常損耗や経年変化にあたるため、原状回復をしなくてもよい
――2020年4月の民法改正により
出典 https://chinkan.jp/renta/recovery
しかし、これが当てはまるのは一般の賃貸住宅であって、サ高住は例外なんだろうか?
で、「明瞭なキズ」は、大きなヤツが2ヵ所ある。
だが、母は「そんなキズはぜったいなかった」と言っているし、私も、引っ越し作業後、くまなく見て回ったが、やはりなかった。
▼同じ角度での撮影ではないが、やっぱり私が撮影したときにキズはない。
私だって、相手が一筋縄ではいかねえとわかっているから、部屋中60枚撮影している。
そんだけ見ているから、これほど大きなキズがあれば、私が即気づくはず。
とまあ、そりゃ母ちゃんも「噴火」するよねえ。
ヒドい施設でごぜえます。
今日は、午前中にさっそく母ちゃんがサ高住に電話した。
ずっとお世話になっていたケアマネさんが、電話に出たのだが、
母「あのう、部屋の写真について、お話したいのですが」
ケアマネさん「いま、手元にないから、わかりません」
「でも、オカしい写真があるんですよ」
「はあ、どれですか?」
「いえ、ぜんぶですよ」
「はあ? ぜんぶ? あっはっはっは! ぜんぶですかぁ~、はっはっは!」
あたしゃ、コイツあほか?!とクソッ腹が立ったが、母ちゃんは笑われても、シンボウ強く黙っていた。
頃合いを見計らって、とちゅうで私が電話を替わった。
私「あのう、娘の春子です。お世話になります」
ケアマネさん「はい」
「まず、申し上げておきますが、このお電話はすべて録音しております」
「えっ……」
「おカネが絡む大事なお話ですからね、さいしょからぜんぶ録音しておりますよ」
「…………」
「ですから、心してお話をお伺いしようと存じます」
「…………」
それからあとは、ケアマネさん、わりとおとなしくなった。
ちなみに「録音している」っちゅーのは、ハッタリである。
そんなん、しとらんよ、メンドーだから。
けど、私は「ハッタリをカマす」のが得意なのだ。
ま、ケンカはせえへん。
ケンカして、敷引きがヒドくなるのは、かなわんからな。
だから、なるべく冷静に、こちらの言い分を伝えた。
そりゃ、ケアマネさんにしても「目に付いたキズを、とりあえずぜんぶ撮影した」だけ。
ってのは、私もわかっている。
ケアマネさん「私もシロウトですから、これからあと、業者が見積もりします。
業者が見たら、もっと増えると思います」
私「その見積もりに対して、私どもはなにも意見できないのですか?」
「はい、そうです」
「見積もりはいつごろですか?」
「いまはコロナですから、わかりません」
「おおよその時期だけでも、教えてください。
3ヵ月後か半年後か、せいぜいそのぐらいでけっこうです」
「9月以降ですね」
「じゃあ、敷金を返してもらうのは、そのあとですか?」
「急ぐんですか?」
「はい、すでに退去してますから、できるだけ早く返していただきたいですね」
という不毛なやりとりで、電話は終わった。
私はだねえ、さいしょにケアマネさんが大笑いしたのが、非常に不愉快だった。
ときどき母が「あそこじゃね、年寄りだと思って、たまにバカにされるんだよ」と話していたが、なるほど、そのとおりだとよくわかった。
だけど、母ちゃんは、よくガマンしてたなあ。
そして、電話のあとも、母はほとんどグチを言わなかった。
「気になっていた用事が、ひとつ片付いたね」と言って、昼ご飯どきには、ゴキゲンになっていた。
あ、やっぱり「むかし」とは変わったな、母ちゃん、りっぱなヒトだなと、私はあらためてうれしかった。