母の食は、ますます細くなってきた。
おとつい│朝食:パン(小) 昼食:プリン(小) 夕食:ゼリー飲料1個
昨日│朝食:ゼリー飲料1個 昼食:ゼリー飲料1個
いくらなんでも、これでは少なすぎる。
私は、母に対して「食べたいものを食べればいい」と思っていた。
甘いモノが好きなので、食欲がなくても食べられるプリンなどを、頼まれれば買ってきた。
もう90歳なのだし、好きなモノを好きなだけ食べたらいい。
そう思っていたのだが、母が、
「これからは、もうゼリーしかいらない」という。
私「あのう、そうなると……わかると思うけど、栄養不足になってしまって、良くない結果になるよ」
「でも、ほかにはなにも食べたくない」
「じゃあ、新しいクリニックへ行って、診察してもらおうか?」
これまでかかっていた内科クリニックは、サ高住の近くにあり、いまのウチからクルマで35分もかかる。
それで、クリニックを代わることになり、新しいクリニックへの紹介状も、すでにもらってあった。
新クリニックは、母が自分でスマホで探したところで、夕方4時に出発しても、ウチから8分と近かった。
クリニック専用の駐車場がすぐ隣にあるが、その数メートルが、シルバーカーではなかなか進めない。
また、入り口にわりと急なスロープがあり、これがまた難所となり、一進一退しながらヨロヨロ上がる。
介助している私も、かなり疲れる、もうトシだからね。
クリニック内は、インフルエンザ予防接種のヒトたちが多いようだった。
30分ほど待ってから採血。
その後、約1時間後、やっと診察だった。
事前に、問診票はネットでダウンロードしてあり、私が母から聞き取って、症状は記入して提出しておいた。
もちろん、これまでのかかりつけ医からの紹介状もお渡ししてある。
私と同居してから、母の食欲が急に低下したのは、9月17日以降。
そして、11月20日に口内炎ができて、「痛いから」といって、固形物は食べなくなった。
母は、先生の質問に対して、しっかり応答していた。
先生「すぐにわかる血液検査の結果範囲では、まったく異常ありません。
どうして食べたくないのか、なにか理由は考えられますか?」
母「それが、わからないんです。
食欲がぜんぜんなくて」
先生は、似たような質問をなんどか繰り返しておられた。
が、とつぜん、
先生「それはねえ、甘えや。わがままや」
と、やや大きな声で言われた。
私は、びっくり仰天、あっけにとられた。
まさか、お医者さんが患者さんに対して、そんなコトを言うとは!
しかも、はじめての患者に、だ。
けれども、……非常に晴れ晴れとした思いが湧いてきた。
ああ、やっぱりそうだったのか。
そう思ってもいいのか。
なんだか、自分の全身の力が、すうっと抜けていくのを感じた。
と同時に、私が、母を甘やかせてしまったという罪悪感も覚えた。
まあね、母と私の共同責任かねえ。
先生は「食べようとしないから、食べられないんや」などと、しばらく母に話をされていた。
私は、先生のそういう話しぶりに、相変わらずせいせいしていた。
診察のあと、母は点滴を受けることになった。
ベッドへの昇り降りは、看護師さんが介助してくれた。
母が気分を害しているのはあきらかだった。
しかし、だまって点滴を受けていた。
私は、そばの丸イスに腰かけて目を閉じていた。
思い返すと、1週間ほど前に、慢性腎臓病と告げられた日、母は「お昼ごはんはなにも食べない」ときっぱり宣言していた。
もしかすると、病気や老いに対して、ハンガーストライキをやりたくなったのかな?
ハラを立てて、そう、スネちゃったのかもしれない。
その気もちを、もっと早くわかってあげられたらよかったのか。
いや、そういうのも過干渉かね。