昨夜9時に寝たが、12時半に目が覚めてトイレに行ったら、母の部屋から灯りがもれている。
どうしたのか開けてみたら、
「照明のリモコンを落としてしまって拾えず、明るいので眠れない」とのこと。
眠剤半錠を飲んでもらい、灯りを消して、私もふたたび寝たが、早朝4時すぎには目が覚めてしまう。
母はぼーっとして、ほとんどしゃべらない。
やはりなにも口にしたくなくてベッドに寝たまま。
K総合病院の受付は8時開始とのこと。
救急119番へは7時45分に電話をかける。
「〇〇クリニックからK総合病院院長に連絡済みです。
紹介状も持参しますので、K総合病院へ搬送をお願いします」と伝える。
また、「できましたら、付近に来られたときに、サイレンを鳴らさないと助かります」
と、お願いしたところ、
「できません。サイレンはずっと鳴らします」とのこと。
そして、これもクリニックからの指示なのだが、私がK総合病院へ電話をかけて、
「いま救急車を呼びました。これからそちらへ向かいます」と伝えたら、
「早すぎます。9時に来てください」
「えーっ?! もう救急車を呼びましたが。
受付が8時とサイトに書かれていたので……」
とかなんとか言っているうちに、もう救急車が来たらしく、チャイムが鳴り、扉をドンドン叩く音がする。
わ、サイレンは聞こえなかった。止めてくれていたんだ。
救急隊員の方々は、あっという間に、母を担架に乗せて、救急車に運び入れた。
私も同乗し、母の横に座って、救急のヒトからいろいろ質問された。
べつのヒトは、K総合病院に電話をしてくれて、
「もう行っていいのですが、診察は9時からなので、しばらく待ってもらいます」
救急のヒトは、たいへん熱心に、母の既往症や経緯を尋ねてくれた。
90歳と高齢だし、食欲不振で食べられないという症状なのに、うわっ、こんなに聞き取ってくれるとは、とかなり驚いた。
母は、ずっと目を閉じたままで、ときおり苦しそうな表情を見せている。
救急車は午前8時06分に出発、K総合病院には8時18分に到着した。
まず私が降りると、病院の外に立っていたスタッフさんに、受付へ案内される。
「ご本人さんは、救急対応のほうで待っていただきます」という。
受付で、紹介状を渡し、初診の用紙を記入していると、もう先にすぐ診察券を渡してもらえた。
すごい。昨夜、内科クリニックの連絡を受けて、すでに準備していたんだ。
ひと通り、初診の手続きが終わり、待合のイスでぼんやり待っていた。
すると、8時半ごろ、私服の男性が私に近づいてきた。
「すみません、こんな格好で。
担当いたしますS山です」
わわっ、母の主治医の先生らしい。
先生は、出勤されたばかりで、すぐに私のところに来てくれたのだ。
S山先生からも、母の経緯を訊かれたので、私はまた答える。
しばらくやりとりがあったあと、
先生「あのう、たとえば胃ろうとかは、どうお考えですか?」
う、もうその問いになるのか。
私「以前、母と数回ほど話題にしたことはあります。
そのとき、母は『そんな痛いことはしたくない』と言っていました。
私自身は……いまは、ちょっと即答できないですね」
そう。
私も、母とそういう話をときおりしていた。
母は「ヤだヤだ、痛いのヤだ。
そこまでして生きたくない」と笑っていた。
そんなのは、もっとずっと先のことだと、母も私も思っていたからね。