午前9時17分、K総合病院から着信。
出ると、まず師長さんで、
「S山先生と代わります」
すぐに、主治医のS山先生が、ズラズラ~ッと話しはじめた。
「食事が安定して取れていません。
血中酸素飽和度が低めなので、吸入しています。
CT画像で出た肺炎は、いつできたのか判別はむずかしいですが、古くないと思われます。
血液検査では、白血球が……」
といった感じで、まるでカルテを読み上げているかのように、数字も交えて、早口で話がつづいた。
ついで、
「末梢点滴は、取れる部位が少なくなってきます。
しかし、いきなり胃ろうは、暴力的だと思います。
鼻チューブから胃ろうがふつうです。
胃ろうは、過去に大量にやった時期があり、問題となりました。
今日か明日にでも、鼻チューブをします」
なかなか、私が口をはさめるスキがなかったが、このとき、
私「母は、そういう異物を留置するのは、かなりイヤがると思います」
先生「異物がイヤなわりに、苦しい延命治療ばかり望んでいますね。
鼻チューブによる栄養補給も『希望する』になっていますよ」
私「すみません、私どもはシロウトですから、どれほどの苦痛があるか、すべては把握していません。
限られた数分の面会時間で、ただ母は『どうしても生き延びたい』という意思表示をしていたので、延命治療をすべて望む、と書きました」
先生「人工呼吸器をつけたら、はずすとき、〇人になりますよ。
ココにずっといてもらえませんし、転院先を娘さんが探しつづけることになりますよ」
うわっ、そうくるかー。
私「提出日における母の意思を、そのまま書いただけです。
もちろん、今後撤回や修正も行ないますので、どうかご教示ください」
ふう、ケンカしないようにしなくちゃ。
こういうとき、ほんまはバーッと怒りたくなるが、ソレやるとさあ、まるで母ちゃんだもんね。
まあね、先生、キゲン悪なっても当たり前か。
そうです。
先生、お怒りでございますね、たぶん。
あんな事前指示書を、勝手に突き出したあたいに、めちゃくそ、ハラ立ててるんだねえ。
ま、怒るのは、どうぞご自由に。
と思いながら、ズラズラつづく先生のお話を、ふんふんと聞いていた。
結局、もっと長期的な説明もしますとのことで、3日後に私が病院に行くことになった。
9時44分で、先生の話が終わり、また師長さんに代わった。
私「さきほど、先生が『今日か明日、鼻チューブをします』と言われていましたが、
このことを、今日、母に手紙で伝えていいですね?」
師長さん「ちょっと待ってください。確認します」
で、いったん電話を切る。
9時53分、ふたたびかかってきて、こんどはS山先生から直接だった。
「今日、朝食は1割ですが、昨日は7割のときもありました。
数日はだいじょうぶです。
鼻チューブは、3日後、説明のあとにします」
さぁて、いろいろ考えちゃったなあ。
たしかに、事前指示書を、なんの予告もなく提出したのは、よろしくなかった。
ただねえ。
あんなに衰弱している母を見たら、即刻なにかやらずにはいられなかった。
けれども、まあ、あきらかに私の「反撃」だよね。
などと、オノレを反省しつつも、いやいや、もう済んだことだから、これからどうするか?だね。
ケンカしちゃダメ。