夕方、いつものように、病院へ手紙を届けに行った。
12月7日以降、私は毎日病院へ行き、手紙を渡し、たまに洗濯物の交換をしている。
すると今日は、受付のヒトが、
「本人さんから預かっているモノがあります」と言う。
見ると、それは、私宛の封書だった。
受け取って、裏返すと、母の氏名が記され、
さらに「十二月二十一日」と日付も書かれていた。
今日は12月27日だ。
この手紙は、母が6日前に書いたものだろう。
なんだか胸騒ぎがした。
だってさ。
母ちゃん、この病院に入院したのが11月30日の朝。
救急車で搬送されてすぐ、まだ白衣も着ていないお医者が、ふらっと私のほうにやってきて、
「点滴だけですと、1ヵ月ぐらいです」と言った。
なので、後になって、私が「胃ろうしてくれ、経鼻胃管してくれ」と、このS山先生とすったもんだしまくり。
けどな、コイツ、胃ろうはココでできん、経鼻胃管も結局ウヤムヤで終わった。
そのまんまで、もう12月27日なんだよ。
そしたらさ、「1ヵ月」がもうすぐそこ。
だのに、母が私宛に書いた手紙すら、6日も遅れて、いまごろボソッと渡すんだ。
しかし、ココで怒ろうが、嘆こうが、なんの役にも立たない。
この病院は、そういう病院なんだと、あきらめるしかない。
私は、待合い室の奥に移動して、すぐに手紙を開いた。
一見すると、とてもしっかりときれいな文字が綴られていて、非常にほっとする。
毎日お手紙有難う
とてもうれしくて 何度もよみ返しています
又、今回は(病院探しのこと)すみませんでした。
疲れたでしょう ごめんなさいね
結果はあせらず 待ちましょうね
今の私の気持は、この病院を出来るだけ早く 退院をしたいのです
くわしくは面会の時に話します
昨日は腹痛と下痢でしんどかったです
鼻チューブ食の栄養価アップと量が多かったのが原因の様です
今は内容を替えてもらっています
手がふるえて思うように書けません
汚い字でごめんなさいね
十二月二十一日
ああ、なんと哀れな……
てか! 鼻チューブ(経鼻胃管)、やってるんだっ!
おいっ、S山っ!
よぉし、よしよし、それでいい。
てめえが、おとなしく、コッチの言うとおりやっとったら、
そうだな、てめえんちに灯油撒くのは、延期したるぜっ!
しかしなあ……
こんだけふつうに手紙書けるニンゲンをだな、
「はい、今年いっぱいであの世に行ってね」って処置しかしないって。
おいおい、S山っ!
てめえこそ、この世から去ってくれいっ!