今日病院へ手紙を届けに行ったら、受付のヒトが「ちょっとお待ちください」とおっしゃる。
なんだべ? 明日の胃ろう指導のことかね?
ちっとも胃ろうの本読んでないのが、バレたかね?
母の部屋を汚部屋にしたのも、バレたかね?
しばらくしたら、母の担当看護師さんが降りて来られた。
私は「明日、どうかよろしくお願いします」と、しおらしくアタマを下げた。
見ると、母の手紙をお持ちだ。
母からの連絡は、たいてい困っていることなので、
「すみません、急ぐかもしれませんので、すぐ中身を見ます。
ちょっとだけお待ちください」
中には、一筆箋が一枚入っており、「洗濯物が届きません」とのこと。
ああ、それは昨日渡したなあ。
なんかどっかで滞っているんでしょ。
明日の夕方、母のところへ行けるので、そのときでもいい。
しかし! 母のことだから、ずーっと気にして悩むにちがいない。
せっかくわざわざ手紙まで書いているのだから、私は看護師さんにこう頼んだ。
「お忙しいところ、申し訳ありませんが、昨日お渡ししているので、
ご確認いただいて、ご面倒ですが、受付までお電話をいただけると助かります」
看護師さん「はい、いいですよ」
私「大変ありがとうございます。
いま、お忙しいですよね?」
「いえ、だいじょうぶです」
ならば、ということで、胃ろう指導や今後のことについて、尋ねさせてもらった。
担当看護師さんに会える機会がめったにないので、絶好のチャンス!
いろいろ質問させてもらったところ、
そもそも胃ろう指導は、何回か分けてやる予定らしかった。
1回目 → 見学、2回目 → さいしょの接続、3回目 → 最後の処置、その後数回練習。
それは……過剰だっ!
んなもん、1回、自分でやるだけでいい!
と、とっさに思ったが、いやいや、せっかく看護師さんが、私のためを思って計画してくれたんだ。
看護師さん「なんですが、見学は、ちょっとやめようかと」
「そうですね、明日、私がすぐやってみます」
看護師さん「はい、明日はチューブをつなぐだけで」
「つないだら、私は、1階で待っていますから、終わったら連絡してください。
上がって、はずすのをやります」
「え? 1時間はかかりますよ」
「ちっともかまいません」
「いやあ……つなぐのと、はずすのは、別々の日にする予定です」
「それは、同じ日にしていただけると、助かりますが、なにか理由があるのでしょうか?」
「そういう計画なんです」
「せっかくですが、同じ日にやってしまったほうが、病院さんも私も、一度で済んでよろしいかもしれませんね」
「う~ん、そ れ は、う~ん、考えていなくて」
「あと、私がやるのは1回でいいです。
そんなに複雑な処理ではないでしょう?」
「う~ん……」
「私、注射器は扱ったことありますよ。
以前、司法解剖と行政解剖の仕事、やってたんで」
「はあ」
ココでうっかり「生きた胃袋は、はじめてですけどね」と言いたかったが、ガマンしといた。
とりあえず、「1回でいいだろ?」を強力にプッシュ。
で、よく聞いてみたら、主治医先生は「いつ、退院してもOK」と言われているらしい。
だけど、退院までに、いろんなセオリーや手順があるらしく、どうもそれにのっとってやるために、退院が延びているようだ。
たとえば、服薬管理をどうするか?とか。
んなもん、ウチでやるから、お願いなんで2月末までに退院させて~
月をまたいだら、入院費も高くなるじゃん!
私「すいません、ウチ貧乏なんで、どうか2月末までにお願いいたします」と、深々とアタマを下げる。
あと「栄養剤、いまは『食品』だと思いますが、それ、退院のとき『医薬品』として処方していただけるか、主治医先生にご依頼いただけませんか?
『医薬品』だと、健康保険が使えますので、ウチ貧乏なんで助かります」
これ、こないだの面会のときもお願いしたが、たぶんお忙しいからねえ。
看護師さんは、ご自分の手首に、ボールペンでメモしてくれた。
なんかさ、看護師さんとかお医者さんとか、手にメモ書きするヒト、多いよね。
ということで、貧乏を連呼してお願いしまくった。
まあ、あとでよく考えたら、病棟全体で、母の退院までのスケジュールを組んでいて、
そんなの、コロナがあった分、3月まで延びて当たり前だったんだね。
だが、とりあえず頼みたいことは頼んでおいた。
しかも、私にしては非常にめずらしく、ケンカしなかった!
前はね、だいたいこういう展開になると、ただちに「戦闘モード」に突入して、
ほんとマジでケンカしてたんだよ、ずっと。
たぶん「ははあ、だれかさんがコロナになったから、3月に延びるんですな。
入院費かせごう思って、コロナ仕入れはったんですか?」ぐらいは言うてるな。
でも、今日はケンカする気、ならなかった。
地味にうれしい。
けどね、看護師さんは、お困りでしょう。
たぶん書類とか、ぜんぶ作り直さんといかんからね。
いちおう「ご負担がかかるようなら、退院延びてもかまいません」とは、言っておいたよ。