いま現在、トイレの外周りに手すりが3本、トイレの中にも手すりを3つ設置してある。
すでに母は、ベッドから起き上がるのはトイレ往復のみ。
ベッドからトイレへはシルバーカーで移動するが、歩幅は10センチぐらいかな。
私が母の身体をガッチリ確保していないと、容易に倒れてしまう。
で、トイレの前は狭い廊下だ。シルバーカーを取り回すスペースはなし。
なので、廊下まで来ると、といっても母の部屋の前が廊下なので、すぐそばなんだが、そのあたりでシルバーカーをいったん置く。
そして、そのあとトイレまでは、4本の手すりを頼りに伝い歩きしながら、ようやっとトイレの中に入る。
もちろん私が支えながらだ。
で、よくよく観察していたら、外側の手すり1本は、ほぼ使わないとわかってきた。
使わないなら、1本でも減らしたほうが、廊下が広くなりシルバーカーを扱いやすい。
それに、その余分な1本が母の目に入ると、つかむかどうか迷ってしまい、その迷いから転倒につながる、ということもわかった。
というわけで、不要な手すり1本を回収してもらうために、福祉用具事業所のスタッフさんに来ていただいた。
このスタッフさんは、もう去年7月からお世話になっており、いつも親身になってアドバイスをしてくださる。
すでに10回転倒している母。
しかし、母自身は「もうコロばない。もちろん骨折もしない」と思っている。
コロぶコロばない、リハビリするしないの論争は、ウチではヤらないことになっていた。
私がしつこくて、これまで散々蒸し返してきたけど、母は一貫して「コロばない。リハビリ嫌い」と言っている。
だったら、母本人の意思を尊重したいので、もう私は母の希望どおりに従っていた。
ところが、だ。
今日スタッフさんは、いつになく強い口調で母にこう迫っていた。
「これまで骨折しなかったのは、ほんとにたまたま運がよかっただけですよ。
もうつぎはどうなるか、それをぜひ考えてください。
せっかくおうちで暮らせているのに、もし骨折したら、入院してそのままになるかもしれません。
もうずっとおうちに帰れない。そういう場合もじゅうぶんあるんです」
ひええ、たぶん大腿骨の付け根の骨折とかだろうなあ。
以前私も、骨折したらどんなにタイヘンか、そりゃもう何回も言っていたけど、ねえ。
やっぱり母自身は、身近でそういうヒトを見たこともないし、パソコンの画面で見慣れているわけでもない。
単に「知らない、見たことがない」ならば、カンタンに骨折することも、高齢者の骨折のその後も、まあ、ピンと来ないのが当たり前か。
さて、スタッフさんが帰ったあと、私が母に、
「さっきのお話、なにか思ったことある?」と尋ねた。
「怖いわねえ」と、さほど怖そうな表情でもなく、ややのんびり答える母。
さてさて、夕方6時04分、トイレからの帰り、
母が「ああ」とうめき、抱えていた私も母の脚を見て、こりゃダメだとすぐわかり、ゆっくりズルズルと母を床にコロがらせた。
今回は、両ヒザともヒザ折れだったねえ。
寝たきりだから、脚の筋肉がどんどん弱っていっている。
いつものように枕とふとんをあてがい、6時09分緊急コール、6時26分ヘルパーさん到着、ベッドへ移動、6時31分退出。
こういうの、慣れるか?というと、いやあ、慣れないよ。
なにかの拍子で、強く打ったら即骨折だもん。あーあ。
けど、母はやっぱり「もうコロばない」と思うだろうなあ。