持ちマンションが売れたといっても、じゃあさ、結局いくら手に入ったん?ってとこなんだが、ほぼグランドピアノと同じ金額だった。
●マンション売却価格から諸費用引いたヤツ(つまり手取り) → 1,855,463円……①
●グランドピアノ(全額ローン) → 1,890,000円……②
うむ、こんな感じになるとは予想しておった。だって不動産屋のTさんが、事前にちゃんと試算してくれてたからね。
でさあ、①-②=▲34,537円じゃん?
せっかくウチ売ったけど、相殺したらマイナスやん? しかもこれからはずーっと賃貸暮らしですやん? 要するに永遠に下流老人じゃん?
さて、本日の決済&引渡しは午前10時開始というのに、ワシ起きたのは8時10分やった。相変わらずフザけたババアや。
それでも必死こいて9時32分にはクルマで不動産屋に着いたのに、早くも全メンバー勢ぞろいですでにやいのやいの書類を広げておられた。ワシだけまた遅刻っス。
その4人のかたがたを見て、少しばかり怖くなっちまった。というのも、いまこのヒトたちがこんなありさまになっているのは、もとはと言えば9月4日にワシが「あ、もうずっとピアノ弾きたい。ってことはあのマンション戻らへん。売却しよ」って思ったのがきっかけだからね。
てか、ワシがグランドピアノまで買おうと迷うことなく決断したのは、ピアノの先生があまりにもすばらしいからなんだよね。つまり、うん、当の先生はなにもご存じなく、きっとこの瞬間もだれかを指導しておられるんだと思うけど、もとを辿れば先生が震源地となって、いまこの不動産屋で4人が顔突き合わせているわけだ。
うっ……、なんかヒトの出会いが織りなす突飛な展開にメマイがしそうになったけど、現実に戻ってまずは司法書士の先生にごあいさつ。先生「住所変更登記していただいて助かりました」。いやいや、アレは先生に払うゼニをケチッてオノレでやっただけや。
不動産屋のTさんはいつも通りあざやかな進行ぶりで、いやホンマ、そのプロフェッショナルぶりはまるでピアニストの手の動きのごとく、なにひとつムダなく、かといってせわしげな様子も見せず、よどみなくかつ要所を押さえながら手続きはサラサラ進む。
ああ、そうっスねえ、そげなふうにハノンも弾くべきですなあと感心した。
結局、10時10分にはすべてが終了した。一同アタマを下げてごあいさつして解散である。ほんの一瞬の出会いと別れ。そう、さようなら、買主さん、あそこのマンションでしあわせを紡いでね。新しい人生を歩んでね。
ワシは、その買主さんの大切なお金を受け取って、さあどうする?
じつは、友だちのKさんには「もし売れたらこのぐらいのお金になる」ってハナシをしたことがある。
良識的かつ善良なKさんは「そのお金でピアノのローンを返さないんですか?」
せえへんよ、Kさん。
だれが返すかよっ!
借金っちゅーのはな、「踏み倒す」んが正しいありかたやねん。
あ、でもな、グランドピアノは「現物」があるからヤバい。踏み倒したら取りに来よるからね。ホンマ、差し押さえに来よっても隠されへんし、ヨソに移動すんのも不可能に近い。
その点、バイオリンとか管楽器とか持ち運びできるサイズの楽器やっとるヒトはよろしいなあ。