ピアノレッスン第97回 記録 その3|こんなふうに「宝物」をもらえるレッスン

ピアノレッスン記録

※「ピアノレッスン第97回 その1|「お宝」をもらえる回数って、じつはあと〇回と決まっている」はこちら。

※「ピアノレッスン第97回 その2|「それっぽく」弾けるとうれしいじゃん?」はこちら。

これまで2年2ヵ月レッスンを受けてきて、それはもう、「まったく知らなかった世界」をつぎつぎと見せてもらうことになっている。

カウンセラー/作家である根本裕幸さんが、かつてあるセミナーで、感に堪えないかのような表情を浮かべて、しみじみとこう言われた。


「やっぱりね、専門家に教えてもらうと、なんでもそうですね、(ココでおもくそ顔をしかめて)、

ホントに料理でもなんでもそうですけど、プロに教えてもらうと、(ココでポンと手を打って)、

ああ、そういう使い方ができるんだ!とか、まあもう、その道のエキスパートはシロウトが知らないことをいっぱい持ってるんですよ」

まさにそのとおりで、これまで私が「その存在すら知らなかったこと」ばかり、レッスンの都度、浴びせかけてもらっている。


▼ツェルニー40番の11番 → 1回目のレッスン。
これ、まあがんばったつもりだけど、↓こんな感じでやっていた。しんどい。ぜえぜえ。

ミファレミド|ラシソラファ|ミファレミド|ファレミドレシ」


そうしたら、先生は↓「こうされたほうが、とてもラクになりますよ」とお手本を弾いてくださった。

ミファレミド(ふわっ)ドラシソラファミファレミド(ふわっ)ファレミドレシ

おう……、なんとうつくしい!

一つ目と三つ目のはじめの一音だけが、うぁん!と豊かに響いたのち、そのあとはヒラヒラ舞い落ちる。

二つ目、四つ目は、ふわんっとまるでたんぽぽの綿毛のようにやわらかく消え入るように落ちてくる。


ああ、こんなにもうつくしい曲だったんだねえ。

必死こいて「ドカドカドカ|ドカドカドカ」を「がんばる」練習曲じゃなかった。

なにかキラキラした粒がころがったり、綿毛がふんわり漂うのを、わあ、きれい!って眺める曲だったんだ。

で、その弾きかたを具体的に、順を追って教えていただいて、それから弾いてみたら、

すっげえラクチンなのっ! ぜんぜんちがうのっ!

まだまだ先生みたいにきれいな音にはならないけど、弾くときの指は、ふわあって軽くなっちゃったのっ!


もうね、こういう感動がたまらんのよねえ。いっつもだけど。

それに、なによりも、「ピアノの音って、こんなにも多彩なんだ」と驚嘆するんだよね。

いったい何十種類あるんだろう?

レッスンに行けば行くほど、ああ、こんな響きもあるんだ、あんなにはかなげ音もあれば、爆風を感じるほどの大音響もあるんだと、「ピアノの音色」が蓄積されていく。

さいしょのうちは赤鉛筆と青鉛筆しか知らなかったのに、いつの間にか12色になり、24色になって、わあ、ピアノってこんなにたくさんの色を作れるんだね。


▼ベートーベン:ピアノ・ソナタ第10番Op.14-2 第1楽章 ト長調 → 1回目のレッスン。
とうとうベートーベン!
とうとう、こんなにスゴいベートーベンのソナタ!

あたいの人生に、こんな日が来るとはねえ……

うん、もう、いつ献体の迎えのクルマが来てもええよ。

そうだ、楽譜ぜんぶ棺桶に入れてもらおう。燃えるモンはぜんぶ。燃えるゴミもついでにどうぞ。


さて、先生の前で、おそるおそるひととおり弾いてみた。

えっちらおっちらよろよろと。ふう。

弾き終わると、先生「この曲はお好きですか?」

「あ、は、はい、好きですっ!」と答えつつ、ひゃあ、なんか暑苦しかったかなあと反省する。

先生からは「ペダルが多すぎる。あんまりがっちり二拍子にしない」等のご指示。

二拍子なんだけど、なかなか一筋縄ではいかない二拍子で、曲のおしまいの部分からも考えてみる。

えーっ?! そうなんだ、曲全体を見渡して、どんな二拍子なのか考えないといけないんだね。


▼そして、こういうところ。たとえば11小節目。この曲、こんなふうに同じ音がつづくの、多い。
先生「これは、たとえば朝露とかが、葉っぱのうえで、風にフッとゆらぐかのように」とひっそりおっしゃった。

おう……また「お宝」もらっちゃったよ。

ねえ、「レ」を5個並べて、「ミ」に行って「レ」じゃなかった。

朝露だったんだ。

みずみずしい朝露が輝いていて、葉っぱのうえでそよ風に揺らめいているんだった。


先生、どうして朝露のきらめきなんてご存じなんだろう?

私は、それ、いっぱい見てきたよ。

山の朝、テントのなかで、鳥の声で目覚めて、テントのファスナーを開けて外をのぞいたら、あたり一面、朝露でいっぱいだった。

真夏でもひんやりしたすがすがしい空気に満たされていて、葉っぱもお花も、みんなすっかり露をまとっていて、朝日を受けて惜しげもなく輝いていたよ。

私はそれが大好きだったから、こんどはそれをピアノで弾いてみたい。

※「ピアノレッスン第97回 その1|「お宝」をもらえる回数って、じつはあと〇回と決まっている」はこちら。

※「ピアノレッスン第97回 その2|「それっぽく」弾けるとうれしいじゃん?」はこちら。

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