あんなに「野宿」が好きだったのに、いまはすっかり老いぼれて、でも「別のしあわせ」を味わえて

ピアノのイラストと、「これも欲しかったでしょ?」という文字 音楽

ぷー太郎になって、もうじき4ヵ月となる。

あんなにイヤだったパートを辞められて、もっとのびのびできるかと思ったが、なんかねえ、すごく忙しくて。

いまから3年前は、ちょうど「北海道80日間放浪」の真っ最中だった。

これ、あとさき考えず、ああ、北海道を車中泊でぶらぶらしたいなあと思って、ふらーっと北海道へ行ったのだ。

ええと、3年前の7月22日は、どこにいたんだろう?……ほう、富良野にいたんだ。

この年、北海道はとてもいい天気にめぐまれて、いやあ、ほんと行っておいてよかったよ。



北海道長期放浪は、これが2回目。1回目は、2005年のとき、7月1日から10月30日まで。
つまり、43才と56才のときに放浪していたわけだ。

あのー、もしかすると、ふつうのひとは、そないに放浪しないのかもしれない。
まあ、旅行はするだろうけど、何ヵ月もぶらぶらせえへんかも。

でも、私にとっては、わりと気軽に行けるのが「放浪」だ。

それまで、放浪の本をよく読んでいたからね。チャリで日本一周したひとの本とか、何冊も読んでいて、ああ、北海道は放浪する連中の聖地なんだなあって、あこがれだった。

チャリダーって、スゴいよね。人力だもん。
ライダー君は、まあちょっとラクチン。バイクだから。

電車旅のヤツは、ジェイアーラー。
いっちゃんすごいのは、トホダー。徒歩でっせ。

じゃあ、ぜんぶ車中泊で、自分ではなんの苦労もしない無精こいてるのは、なんて言う?

いやあ、あまりにもラクすぎて、名まえなんてねーじゃん?
トホダーやチャリダーのヤツらからしたら、タダの「年寄り旅行」じゃん?



私もむかしは、テントかついで、山のなか八泊九日とかやってたから、自力で歩いてなんぼ、屋根のあるとこで寝たら、山ヤがすたるわい、などと虚勢を張っていた。

でも、四十すぎたら、さすがに20kgとかかつぐのがしんどくなってきた。
もともとキャンピングカーも大好きだから、軽自動車ベースの簡易キャンカーで、ラクをしたくなった。

それでも、43才の放浪では、テントもクルマに積んでいた。
たまにキャンプ場でテント張ったり、それにまだ山登りも現役で、大雪山系をテント泊縦走もやった。

けど、いまはもう、テントもぜんぶ処分してしまった。一時は5~6個持っていたのに。

いやあ、もう、テント張る元気なんて、ぜんぜんないよ。
あんな遊びかたは、若いときしかできねーんだよ。

あ、でもふつうは、おばはんがひとりでテント張って、ごろんと寝ていたりしないか。
「野宿がデフォルト」って、あんまりいねーか。

「年間入山日数100日!」とかめざしていたのに、いまは殊勝に毎日ピアノを弾いているが、そういう変化もめずらしいか。

山のなかで、周りにだれもいない場所で、テント張ってつくねんとしていると、まあ、ラジオでも聞こうかという気になる。

いちおう、まず天気予報は聞いておく。



そのあとは、FM放送だった。FMって、山のなかでもいい音の電波が入った。
モーツァルトとか聞こえてくると、ああ、やっぱりええのうって、ふわっとした気分になった。

ただでも、なんというか、「音楽とのあいだ」にヘンな距離感があった。
「なにかはさまっている」ような、「固いモノがある」ような、そんなある種の「屈託」があった。

それ、ずっと、ヘンだなあ、気色悪いなあって思っていたけど、なにが原因なのか、当時はまったくわからなかった。

で、いまはもう、解明したよ。

私は、ピアノを弾きたかったんだよね。

山だけでじゅうぶんと思っていたし、クルマの放浪もすごく楽しかったけど、それだけでは足りなかったのだ。

まだ「スキマ」が埋まらなかったのだ。

いま、ピアノを弾けるようになってきて、ああ、これも欲しかったんだと、腑に落ちた。

こんなふうに弾けるようになることを、ずっと前から望んでいたんだと、そうなってみて、はじめてよくわかった。

ぷーになっても、毎日忙しい。ピアノの練習で忙しい。

でも、「こんなふうにも生きてみたかった」から、ほんとうにこれでよかったなと満足している。

自然もうつくしいけれど、音楽は、さらにもっと「凝縮されたエッセンス」のようにうつくしいね。