私は、できるだけサラッとカジュアルに尋ねた。
電話の相手は、私にピアノ苦情を伝えてきた不動産屋スタッフさん。
すると、スタッフさんは、
「防音ユニットって、あのヤマハとかのですか?」
う…………
「……は、はい」と私はしかたなく答えた。
だって、そのヤマハの中古防音室だからねえ。
「ダメです。
アレは重量がありすぎて、入れられないんです」
うわ……まさかの即答!
ああ、この不動産屋さん、地元の不動産屋だから、ピアノの音関連にめっちゃくわしいんだな。
ここいら近辺は「音出し可」の賃貸がわりとあって、それだけによく知っている。
「わかりました。防音室は入れません」
と、私はあきらめて電話を切った。
ふう。
ま、地震で床崩壊の恐れがあるから、だれに相談しても「やめてくれ」ってなるよねえ。
ちなみに、つい3ヵ月前、今年2月に大阪市内のデカい楽器店へ、防音室を見に行った。
防音担当のヒト、
「そういえば、先月、ソコ(私が苦情もらった賃貸マンション)のすぐ近くに、防音室入れましたよ」
「え? それも賃貸ですか?」
「はい」
えーっ?! 入れられるトコもあるじゃ~んっ!(泣)
まあ、そこは「鉄筋造(RC)」かもしれんけど。
苦情賃貸マンションは「鉄骨造」なんでね。
そっかー、防音室ダメか……
じゃあ、引っ越しだな!
で、いくら「音出し可」だったとしても、マンションはあかんな。
ココのマンションも、3年前に「音出し可」と堂々とうたっていたから、引っ越してきた。
それまでいちおう「持ちマンション」だったのに、ソレ売って、わざわざ賃貸マンションに移ったのは、グランドピアノを弾けるからなのだが、このありさまだ。
なので、一戸建ての賃貸を探すことにした。
でもなあ、一戸建ては家賃が高いわ!
しかも「音出し可物件」は数が少ない。
あっても、部屋がムダに多くて、高額家賃(あくまでも自分基準で)だ。
すると、「音出し可」のうち、奇妙な物件がたまたま見つかった。
それは、細長くて小さい「雑居ビル」だった。
両隣はデカいちゃんとしたビルで、その狭間に、くだんの「雑居ビル」がひっそり建っている。
ちっちゃい建物なので、ワンフロア1戸しかない。
そのビルの「4階と5階をメゾネット」として、賃貸募集していた。
1階から3階は店舗だった。
これ、ええんちゃう?
5階にピアノを置けば、防音なしでも日中は弾ける。
4階は居住スペース。
だから「音出し可」としているんだろう。
私は、にわかに色めきだって、取扱い不動産屋に電話をした。