結局「事故物件」でも「防音室は必要」とわかった。
まあ、事故だろーがなんだろーが、わりとペラペラの一戸建てなら、絶対「防音は必須」なのだ。
楽器店スタッフさんに何度も同行してもらったが、いろんなケースを聞いていて、ほんと防音しないとムリと悟る。
とくにマズいのは、「苦情が来てから防音室を入れる」こと。
防音室は「完全に無音」にはならない。
たとえば「Dr-35」という規格だと、ピアノの音は「人の話し声程度」になるという。
なので、ピアノを搬入すると同時に、防音室を設置すれば、ほぼクレームにはならない。
しかし、苦情が来てから、しかたなく防音室を入れた場合、ほんのごくわずかな音でも、また苦情が来てしまうケースがあるらしい。
それは、近隣のヒトがずっと長い間イライラとガマンしたあげく、堪忍袋の緒が切れて「苦情」を訴えたからだ。
そういうケースだと、せっかく防音室を入れても、苦情が止まらず、結局引っ越さないといけなくなる。
私は、防音室のショールームで「Dr-35」を見たことがある。
防音室の中で、アップライトピアノを自動演奏しており、防音室のドアを閉めると、なるほど、かなり音はグンと小さくなる。
けどねえ、うわっ、こんなに聞こえるんだ!というのが、正直な感想。
ただ、その自動演奏は、ショパンの幻想即興曲だったのね。
そういうバァ~ンとデカい音ではじまって、そのあとゾロゾロ音数が多いヤツがずっとつづくと、ぎゃあ、聞こえすぎ、近所怖い!って中腰で逃げたくなる。
まあ、一戸建てなら、このぐらい小さくなれば十分だろう。
でも、マンション、だいじょうぶ??
ってのが、私の感想っす。
ただし、私自身は、そういう「バァ~ン」だの「ゾロゾロ」だの、もともと弾けない。
ヨタヨタ、ポツポツ弾いている分には、Dr-35でもマンションOKだと思うよ、たぶん。
(Dr-35より、遮音性能が高いのは、Dr-40。性能は高いが、価格も47万円ほど高くなる。)
さて、事故物件なら「床下補強工事」は不要とわかったが、じゃあ、ソコにするか?
いやあ……古そうな土地柄がね、気になる。
そんなに十数年もウワサになってる戸建てに、まったくヨソモノの私が入って、近所付き合いをウマくやっていく自信がない。
事故物件の内見から帰ってきた日も、私が玄関に入ろうとしたら、またゴミ屋敷お母さんに呼び止められて、
「どこ行ったん? なにして来たん?」と訊かれる。
かなりめんどくさくなって、私は思わず、
「ああ、うん、いろいろ。ちょっとしんどいから、またね」と素っ気なく答えた。
お母さんは、
「あ、ごめんな」と少し顔を曇らせた。
そんなふうに気を遣われると、悪かったかな?と思ったが、そのままウチの中に入った。
ふう。
ずーっとマンション住まいだったから、一戸建てのお付き合いに慣れない。
床下工事が不要だからといって、あの事故物件に引っ越したら、どんなお付き合いになるのやら。
案外「あの世のヒト」より「この世のヒト」のほうがむずかしい。
だが、近所付き合いや、事故ウンヌンより、もっと恐ろしいモノが、私の身に迫りつつあった。