私は、いま59才で、来年春には60才となる。
10年ほど前から、老化現象がはじまった。
いっちゃんはじめに出てきた症状は、「もの忘れ」で、それは48才のときだった。
当時、新しくコンビニのパートに勤めはじめた。
店長さんは、とても若い男性だったが、新入りの私を指導するとき、いろいろなエピソードをまじえて、懇切ていねいに教えてくれた。
レジの操作や、商品の並べかたも、驚くほど、微に入り細をうがって、ゆっくり説明してくれる。
コンビニの仕事をぜんぜん覚えられなくて、仰天した10年前
だが、そのとき、私ははじめて気がついた。
こんなに、ていねいに教えてもらっているのに、聞いたハシから、ぜんぶ忘れてしまう!
とくに、レジの打ちかたは、壊滅的だった。
まず、「商品のバーコードを読み取る」ということを、すぽーんと忘れてしまう。
店長さんが「お客さん役」になり、商品を持って、レジ台に向かってくる。
ところが、私は、
ええと、なにをするんだっけ?
とわからなくなって、やみくもに、レジのキーを適当に押したりした。
まあ、レジ操作ぜんぶが、こんな調子で、まったく覚えることができなかった。
そのうちに慣れますよ。
だいじょうぶです。
しかし、研修の二日目になっても、相変わらず、まったくレジを打てなかった。
それでも、店長さんは笑顔で、何度もていねいに教えてくれた。
これは、オカしい。
ここまで、覚えられないのは、だいぶんヘンだ。
そのコンビニに勤める以前、いろんなパートへ行った。
「仕事が遅い。遅すぎる」という注意は、どこでもされていた。
「遅い」ってのは、いつも言われることなので、そんなのは聞き流していた。
でも、じつは、「仕事を覚えられない」ということは、それまでなかったのだ。
いまから思うと、もう遠いむかしのことだが、40才を過ぎても、「記憶のおとろえ」ってのは、とくに感じなかったんだよねえ。
「覚えていない自分」を、なかなか認められない
それが、48才のコンビニパートで、とつぜん「まったく仕事を覚えられない」ということに、直面してしまった。
かなりショックだったねえ。
「ついさっき、起こったことを、ぜんぜん覚えていない」というのは、当時、けっこう「恐怖」だった。
自分が、「自分じゃなくなる」ような感覚だった。
「ある程度連続して、記憶が残っていて、日常に差し支えない」ってのは、「自分らしさ」の一部かもしれない。
二日目の研修のあと、私はICレコーダーを購入した。
三日目からは、店長さんにお断りして、そのICレコーダーで、仕事中ずっと録音した。
ウチに帰ってから、再生して、文字起こしし、たくさんメモを作る。
ぜんぶ聞き直すのは、タイヘンでしょう?
研修中に、メモ作って、かまいませんよ。
いえいえ、やりながら書くのも、混乱してむずかしいんです。
店長さんは、私がレジに入るとき、レジ周りに、ずらーっとメモを貼り付けてOK、としてくれた。
それが、「もの忘れ」のはじまりだった。
まあ、そういう「外部記憶装置」で、ある程度なんとかなるものの、とうとう「覚えること」はできなかった。
だから、それでなくても手が遅いのに、いちいちメモを探して、読みながら操作するので、さらに時間がかかる。
とうぜん、怒り出すお客さんもいた。
しかし、店長さんもほかのスタッフさんも、おおむね好意的だった。
ただ、大学生アルバイトの男性は、よくふしぎそうにしていた。
それ、つい3分ほどの前のことですけど。
ほんとに覚えていないんですか?
そうね、覚えていないねえ。
自分でも困るんだけど、勝手に忘れていくんだよねえ。
バックルームから「ふたつの商品を取ってくる」という行為でも、やっぱり「ひとつだけ取ってくる」というたぐいのミスばかりする。
数をまちがえる。種類をまちがえる。日付がわからない。言われたことをすぐ忘れる。
それが、若いひとには「ふしぎな行動」に見えるようだった。
さて、その後、またもパートを転々とし、どこへ行っても「仕事を覚えられない、デキない、遅い」と、ずっと言われつづけてきた。
それ以上「もの忘れ」は悪化していないのだから
けれども、そのおよそ10年ちょっとを、振りかえってみたら、
あれ? そんなに「悪化」はしていないかもね。
「もの忘れ」の程度は、それほどヒドくなっていないよ。
そうなのだ。
どこでも「使いモンにならない」のはたしかだが、「どんどん悪くは、なっていない」。
たとえば、出勤日をまちがえるのも、月に一度ぐらいだし、会社の場所を忘れるといったこともない。
ウチから会社まで、ぼーっとしていると道をまちがえるが、会社へ行きつけなかったことはないのだ。
パートそのものは、今年4月で、もうやめた。
でも、自分でスーパーへ買い物も行けるし、お金の支払いもできる。
クルマの運転も、ごくたまにぶつける程度。
おっと、このぐらいひとりで生活できていたら、「もの忘れが、ヒドくて……」なんて、悩まなくていいかもね。
じっさい、仕事以外で困ったのは、去年受講した「カウンセラー養成講座」ぐらいだ。
受けていたときは、やっぱり講座の内容を、かたっぱしから忘れるので、茫然としていた。
それじゃ、ちゃんと復習すればよかったのに、なんかしんどすぎて、とうとう復習はできなかった。
受講生同士で、カウンセリングの自主トレをすると、これまた、クライアント役のひとの話を、どんどん忘れていく。
わあ、どうしよう?
マイッたなあ。
と、困り果てていたが、結局、もうカウンセラーにならないことにしたので、問題なし。
なーんだ。
要するに、「仕事をしよう」とすると、「人並みの記憶力」を必要とされるが、べつに働かないんだったら、そんなに覚えていなくてだいじょうぶだ。
じっさい、パートをやめてからあと、「なにかを忘れていて、自分が困った」ということは、まずなかったはず。
あ、妹の話を、リアルタイムに理解できなくて、妹がちょっと困っていたことは、あったかな。
そのぐらいだね。
だから、ずいぶん長いあいだ、自分のことを「もの忘れがヒドいダメなババア」と決めつけていたけど、あ、もうその必要はないんだなとわかった。
で、オツムがパープーなのは、もう放っておく。
じゃなくて、もっと重要なのが「身体」。
ここしばらく、腰痛、膝痛、あちこち関節全滅で、ほとんど動けない。
痛いから動きたくないのだが、それやってると、ほんとに動けなくなるらしい。
えーっ?!
ウチの中でできる運動|スローステップ運動
なので、ようやく今日から「運動」開始したよ。
とりあえず、5分間、運動した。
台所との境目に、10センチの段差がある。
流しにつかまりながら、その段差を、ゆーっくり、上がったり下がったりしてみた。
名前の通りゆっくりと踏み台を上り下りするだけの運動ですが、効果は絶大です。
実は、ゆっくり動いたときに主に働くのは「遅筋」という筋肉。遅筋は酸素を消費しながら活動するので、効率的な有酸素運動につながるんです。さらに、この運動法は背中やおしり、太ももなど大きな筋肉を使う全身運動なので、ウォーキングよりも消費カロリーが大きくなります。減量効果まで期待できるすぐれワザなんです。
出典 自宅で効率的にできる有酸素運動!「スローステップ運動」|ためしてガッテン
▼ほんとは、こういう台でやるらしい。
でも、買うのは慎重に。
これ以上、モノ増やしたくないから、しばらく台所の段差でやってみる。
痛くても、じわじわがんばった。
たった5分間だけど、わあ、気分変わるねえ。
あ、ほんま、つづけよう。