じつは好きなヒトがいたの│89歳母の告白

日々のあれこれ

母ちゃんには、1日おきに電話している。

まだ積もる話がたくさんあるだろう。

なんせ「私が7年間ほったらかし」にしていたのだから、しばらくは隔日電話で罪滅ぼし。

でも、私がかけるたびに「ありがとう」「感謝してます」と繰り返し言ってくれるので、いやいや、申し訳ない。

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父もそうだったけど、私がなんど裏切ろうと、逆恨みしようと、すべて「なかったこと」にしてくれた。

いまの母も、まったく同じで、私が過去、あんなにヒドい仕打ちをしたというのに、ほんと「なかったこと」にしてくれて、どうかすると私が甘えてしまいそうだ。

今夜も、母はとりとめのない話をしていたが、じつは「話しておきたいことがある」という。

え? なんだろう?



母(89歳)
母(89歳)

春ちゃんに、聞いてもらいたいことがあるの。

そう、どんなことかな?

母(89歳)
母(89歳)

私、むかしあちこちパートに行ったけど、

あそこの会社がいちばんよかったわ。

そんなことをよく思い出すの。

ああ、ホニャララって会社ね。

母は、ひとしきりその会社の思い出話をしていた。

そのホニャララ会社は、私が勤めていた会社と関係があり、私はひとりだけ知っている男性がいた。

知っているといっても、そのヒトはいわゆる「エラいさん」だったから、Yさんという名まえと顔しか知らない。



母(89歳)
母(89歳)

あの会社は、パートさんでも宴会に呼んでくれたのよ。
それでね、私、カラオケ歌わせてもらって。

歌い終わったあと、「ありがとうございました」って言ったの。
だって、みなさんに聞いてもらったからね。

ああ、そう、ちゃんとね。

母(89歳)
母(89歳)

そしたら、Yさんが……

わあ、Yさんの名まえ、よく覚えてるね!

母(89歳)
母(89歳)

Yさんがね、私にね。
「歌ったあと、ありがとうというひと、はじめてだ」
って言ってくれたの。

うんうん、わざわざね。

母(89歳)
母(89歳)

それでね、宴会で一度ね。
私の席が、Yさんのお隣だったの。
でも、Yさん、エラいひとだから畏れ多くて、
私、なるべく横にあいだを開けて座ってたの。

なるほど。
(私は内心、「ふふん、宴会の幹事さん、
エラいさんの隣はむずかしいから、
無難なパートさんを配置したんだな」と思った)




母(89歳)
母(89歳)

そしたら、Yさんが私に、
「そんなに離れて座って、
僕が隣だとイヤなの?」って言って。

ふふ。

母(89歳)
母(89歳)

それでね、春ちゃん。
あのね、私ね、
Yさんのこと、好きになったの。

え…………

母(89歳)
母(89歳)

ずーっと好きだったの。
片思いだったの。

それ、春ちゃんに聞いてもらいたくて。

ああ……そうなんだ。
うん……
すてきなお話をありがとうね。

わあ……母ちゃんが「話しておきたいこと」って、まさかそんな話だったなんてっ?!

母がその会社に勤めていたのは、母が50代前半だ。

ということは、いまから35年ほど前の出来事。




えーっ?!

89歳のいま、人生を振り返って、子どもに話しておきたいことが、「片思い」だったとは!

でも、母も「ひとりの女性」だったんだなあ。

母は自分のダンナ(私の父)が大嫌いだった。

しかし、いちど結婚してしまったら、当時は離婚するなんて思いもよらないことで、ただ忍従するだけ。

母がふと好意を寄せたのは、Yさんだけなんだろう。

たった2回だけの会話で満足している、はかなげな恋。

こんど、母に会ってゆっくり話ができる機会があったら、もう一度Yさんのことを聞きたいと思った。

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