今朝起きたら、まず、机の上に置いたままにしていた、母の手紙が目に入った。
奇妙なことに、昨日ほど、つらい気もちが湧かない。
これまでずっと、母は端正な字を書くヒトだった。
なので、それが、こんなにも乱れているのが、昨日はやりきれない思いだった。
しかし、今日眺めると、
ああ、老衰というのは、こういうことなんだな、と。
きれいに書きたくても、それができなくなるのが、究極の老いなんだな、と。
これから先、もっとずっと、できないことが増えていく。
でも、それが自然なことなんだな、と。
そんなふうに感じた。
いずれ私も、おなじ道をたどるんだな。
けれども、いま現在、私はやりたいことがある。
やっぱりバッハを弾きたいのう。
クルマで、頻回聴いているのが、いまはゴールドベルク変奏曲。
あの長~い、1時間もかかる、だのに一瞬も飽きない壮大な変奏曲。
私が大好きなのは、最後の30番目の変奏。
いつ聴いても、多幸感が湧きあがって、いちばんしあわせになれる曲。
そして……、いちばん最後に、またアリアになって。
で、いっつも泣けるのよねえ、アリアに戻ると。
クルマだから、いいけど、いつも涙がドバーッて。
なんで、あの最後のアリアは、泣けてしゃーないんだろ?
さめざめと泣いていると、母がこれからどうなっても、うん、そうなんだよねえって思えてくる。
それでね、まあ、新年だしね。
ああ、そうだなあ、自分でゴールドベルク変奏曲、弾いてみたいなって。
その前に、平均律も。
けどさ、まだフランス組曲が残っていて。
フランス組曲、ぜんぶで6曲あって、これまでのレッスンで「5 → 6 → 4 → 3」が終わった。
さいしょにはじめたの、2020年7月14日ですぜ?
そいで、第3番の最後の曲が終わりそうなとき、先生が、
ほんのちょびっと、「平均律……」って言われていたのを、私はたしかに覚えている。(2022年5月頃)
だが!
その後、グランドピアノを売却して、どーたらこーたらしているうちに、
ようやっとレッスンに戻ったら、
第3番が終わったとき、先生はこうおっしゃった。
「では、つぎはフランス組曲第1番のアルマンドを」(2023年5月2日)
ああっ! 平均律じゃねーんだっ!
いやあ、ええんですよ、バッハだったらなんでも。
もちろん、フランス組曲コンプリートだって、すばらしいことっす!
だから、いま私は、フランス組曲の第1番と第2番を、なんとか自力で仕上げようという、途方もない計画を立てている。
だって、介護があるから、どうせレッスンいけないし。
母ちゃんには長生きしてもらわにゃいけんから、そのあいだに、せっせとフランス組曲だよ。
何年かかりますかいのう?
いずれにしても、フランス組曲が終わったら、「平均律とゴールドベルク変奏曲」を同時並行で練習したいと存じます。
これ、10年たっても終わんねーな。